〜もりりん牧場・工房〜

スター☆トゥインクルプリキュア
カッパード×ひかる デート妄想話

ふたりのハネムーン予行演習!?

〜Side『K』〜

(2020年2月)
※ これは2020年1月19日にTwitter投稿した『ふたりの事前ハネムーン?』( https://twitter.com/schu_mb/status/1218776265064235008 )に大幅な加筆修正を加え改題したものです。




(前置き)
この妄想話は、プリパパさん( @Puri__Papa )のカパひか絵
( https://twitter.com/Puri__Papa/status/1217280321441284100 )
から着想を得て書きました。ありがとうございます。





「……どうして……こうなった…………」
オレは戸惑っていた。

思い返せばこうだ。あいつにオニギリなるもので餌付けされたことで、オレの中であいつに対するモヤモヤした思いが一気に広がっていた。
「……あいつはいったい何をしたいんだ? ……あいつの意図はなんなんだ?」
……この独り言をユニとアイワーンに聞かれてしまったのが事の発端だった。
「ケヒャヒャヒャ! カッパード何を悩んでんだっつーの」
「……げっ! アイワーン!」
「『あいつ』がどうとかね……カッパードのことだから大方ひかるのことね」
「……ユニ! お前までいるのかよ……」
「なんか面白いことになりそうだっつーの」
「そうね。話くらいは聞いてあげるニャン」
ニヤニヤとして近寄ってくる2人……ダメだこいつら絶対に良からぬこと考えてる!
「…………」
オレは黙るしかできなかったが……もはやこいつらに勘付かれてしまったのが運の尽き。ついにこう切り出してしまった。
「…………なぁ? こないだのオニギリといい、どうしてあいつはああもグイグイと攻めてくるんだ?」
「カッパード知らないの? あのオニギリはひかるの求愛行動ニャン」
「求愛!? あいつが……なのか?」
オレはユニの言葉がにわかには信じられなかった。しかし……こいつらは訝るオレをねじ伏せるようにこう続けてきた。
「当然ニャン。ひかるがあんたにお熱なのも、あんたがひかるにご執心なのも、みんなとっくに気付いてるニャン」
「そうだっつーの! 知らないのは本人たちだけだっつーの! ケヒャヒャヒャ!!」
「………………」
……あいつが……オレを? ……オレが……あいつを!?
「……オレは……オレはどうしたら!」
「とにかくデートのお膳立てしといてやるからさっさと行けっつーの!」
「衣装も用意しとくニャン」
「お……おい!」

こうしてユニとアイワーンに乗せられるがまま、押し付けられた衣装に袖を通したのだが……
「……これではデートと云うより結婚式ではないか!」
あいつらは何を血迷ったのか、白タキシードを寄越しやがったのだ!
「……いったいオレにどうしろと…………」
「……カッパード?」
「おぅ、お前か。付き合わせてすまん…………なっ!?」
オレは驚きのあまりに固まってしまった。こいつが着ていたもの……肩を完全に出し、胸元まで顕にしたドレス………………あの猫! なんてモノを用意してくれたんだ! いったいオレたちに何をさせようっていうんだ!!
「……この服ね、ユニが用意してくれたんだ」
こいつははにかんでモジモジしている。 ……いつもの調子はどこにいった? ……だがそんないつもと違うこいつもまた新鮮だ。
「やっぱりお前もそうだったのか…………似合ってるぞ」
「えっ!?」
「……似合ってると言ったんだ」
「……ありがと、カッパード」
……ったく、くさいセリフを二度も言わせるな! ホントに今日は調子が狂うな……
「……ねぇカッパード?」
「うん?」
「……わたしたちのこの格好……なんだか新婚旅行みたいだね」
……やっぱりそうきたか! ……まぁオレがそう思ってたんだからこいつが同じこと言うのも当然か………… 「やっぱり……そう思うか?」
「うん」
(とにかくデートのお膳立てしといてやるからさっさと行けっつーの!)
……不意にアイワーンのあの一言がリフレインしてきた。 ……やはり……行くべきなのか…………。 オレはおそるおそる切り出した。
「なら……」
「……なら?」
「……このまま何処かに出掛けないか?」
「……えっ?」
「せっかくのこの格好なんだ。こうなったらあいつらの思惑にどこまでも乗ってやろうではないか!」
「……そうだね。 せっかくの機会だもん。ふたりでデートしよっ。宇宙デート! キラやば〜!」
……やっといつもの調子が出てきたな。やっぱりこいつはこうでないとな。
「でもあまり時間は掛けられんぞ? 宇宙空間での移動は思いのほか時間食うからな」
「そっかぁ…………じゃぁ……わたし、この地球を外から眺めたいの」
「そんなんでいいのか?」
「うん。しばらくは見られなくなりそうだからね。地球の姿をもう一度この目に焼き付けておきたいの」
「そうか……地球人の科学力じゃ、宇宙旅行はまだまだ簡単じゃないもんな」
「そう考えると、わたしたちって地球人離れした体験したんだなー、って」
「そうだな。オレが『器』……フワを追いかけてここまで来たのも何かの縁だったんだな……今更だが」
オレは船を発進させようとスロットルに手を掛ける。慣れた手順のはずだが、なんだかいつもより緊張する……こいつが隣にいるせいか?
「……さぁ……行くぞ」
「うん」
船はいつものように浮上して……程なく。眼下には闇の中に青く輝く星の全景が。
「……綺麗な……星だな」
……オレの故郷のかつての姿を彷彿させる水の星、地球。
「…………うん」
俺の隣にいるこいつの故郷、地球。
「大切に……しないとな……」
……この星は、オレの故郷のようにはしたくない。
「うん……」
そう頷いたこいつのピンクの瞳は、地球の色を映して青く染まっている。
「……綺麗だ…………」
「……カッパード? わたしを見つめてどうしたの?」
「……え!?」
……どうやらオレはこいつに見惚れていたらしい……ってかオレは何を口走ったんだ!?
「…………『綺麗だ』って……」
こいつの頬がみるみる紅く染まっていくのがわかる。
「……うん、まぁ……その……あれだ。とにかくそういうことだ」
「……ありがと。カッパード」
オレたちは、ただ無言でこの青い星を眺めていた。この星が縁で巡り逢った2人の軌跡に想いを馳せながら……

…………2時間ほどそうしていただろうか。静寂を破ったのはこいつのほうだった。
「……そろそろ、帰ろっか」
「……そうだな」
船を地球に向けて降下させながらふと隣を見ると、こいつはなんだか寂しそうな表情をしていた。
「………………」
「………………」
……オレたちは無言のまま地球へと戻ってきた。
「……どうだったか?」
「……感慨深かった」
「そうか……」
その言葉を聞けて安心した。
「ねぇカッパード?」
「どうした?」
「わたしね、夢ができたの」
「どんなのだ?」
「わたし、『地球人の力』で宇宙に出て……カッパードに……みんなに会いに行きたい」
「お前……それがどんな意味なのか解ってるのか? 地球人の文明じゃまだ……」
「それは解ってる。夜空の星を掴むようなことだってことは」
「だったらなんで……」
「……わたしたち、『イマジネーション』でいろんなことやってきたでしょ?」
「そりゃそうだが……」
「だから、その『イマジネーション』で全部乗り越えてみせるの。時間も、空間も、宇宙の法則も全部!」
「だからってなぁお前は……」
「……ひ・か・る!」
「……えっ!?」
「前々から思ってたんだけど……『お前』じゃなくて『ひかる』! ちゃんと名前で呼んで、カッパード!」
……『名前で呼んで』だと!? それは踏み込み過ぎではないのか?
「いいから早く呼んで!」
……いいのか? でもこいつがいいって言ってるんだから…………オレは意を決して……
「……ひ…かる?」
「……よくできました」
こいつ……ひかるはにっこりと微笑み……
「今日は……ありがとね」
ひかるの顔が急に迫ってきて……おれの唇に温かく、そして柔らかい感触が……
「なっ…………」
オレでもわかる。眼前にいるひかると同様、オレの顔が尋常じゃなく紅くなっているのが。
「………………」
「………………」
夕日に照らされ見つめ合うオレとひかる。
「……あ…………」
オレはこう声を絞り出すのがやっとだった。それなのに…………
「……ケヒャヒャヒャ……こいつらみんなで見ていたとは知らないでチューまでしやがったっつーの!」
……え? みんなで? 見ていた? どういうことだ!?
「なかなか隅に置けないニャン」
「オヨォォォォォ…………」
「ふたりともやるぅ〜」
「大胆ですね」
「若いっていいわねぇ〜」
……やっぱりオレたちはこのふたりに踊らされていたのか…………
「…………お前らぁーーっっ!!」
オレはユニとアイワーンを追いかけ回した。 ……まぁ、照れ隠しのためということもあったがな。
「ケヒャヒャヒャヒャ!」
「キャー! カッパードが怒ったニャン」
「待てぇーーーっ!」
…………でも……ありがとうな。ユニ、アイワーン。
そして…………ひかる。オレは……お前が…………

〜 fin.〜





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